2024年3月号「作図を読む」

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作型図を読む

  • 作型図ってなに?

皆さんが野菜を作ろうと種子を購入したり、品種を選んだりする際に、指標の一つとなるのが作型図です。 品種ごとの休眠や花芽形成を踏まえて栽培時期を示したもので、種子の絵袋の裏面などに掲載されています。

それぞれの野菜ごとに栽培する時期はおおよそ決まっています。ただ、地域的な気温差から栽培時期に違いが生じ、品種特性 (生育日数、日長反応、低温反応、低温耐性など)から品種ごとに栽培適期が異なってくるので、それらを反映させたものが作型図です。

品種特性を熟知した種苗メーカーが私たちのために作成しています。日本全国を視野に入れた栽培地、播種時期、収穫時期が図示されていて、必要に応じてトンネルとか注意書きが書き加えられています。

  • 海部地域はどの栽培地か?

野菜の生育は温度に大きく依存しているため、地域ごとの気温から栽培地をほぼ区分できます。九州などの暖かい地域を暖地、北海道や東北山間部などを高冷地・冷涼地、中間にあたる地域を一般地 (中間地)などと分けています。愛知県は一般地から暖地で、JAあいち海部管内は一般地に分類されます。ただ、晩秋から春までの寒い期間ととらえた方が良く、それ以外の暖かい期間は暖地に近いと考えた方が妥当です。 特にタマネギの育苗では苗の生育が早く暖地ととらえるべきでしょう。

管内でも、関ヶ原に近い八開地区や佐織地区と海に近い弥富地区や飛島地区では、晩秋から春にかけての気温、特に最低気温は意外に違います。自らの地域が暖地的か冷涼地的か栽培経験を踏まえて判断し、作型図から作付け計画や品種の選定に活かしましょう。

  • 品目特性の一端がみえる

ホウレンソウでは栽培地の分類ごとに、春まき、夏まき、秋まきができますが、その適応時期は異なっています。暖地では真夏に収穫するような5~7月に播種する作型がないことから、暑さに弱い野菜ということがわかります。

また、一般地では12月~2月に播種する作型が記載されていないことから、低温が栽培上のどこかでネックとなることが想像できます。 実際、ホウレンソウの発芽には4℃以上の地温が必要であり、厳寒期の生育には低温と風のストレスがかかって葉が傷みやすく商品化率が悪くなるためです。

暖地では5~8月の播種は掲載されておらず、とても難しい栽培とわかります。 一般地で栽培するには雨よけ栽培が必須で、品種の厳選をはじめ、遮光、かん水などのたいへん高度な栽培技術が必要です。

ホウレンソウ作型図(株サカタのタネWebページから引用)
  • 品種ごとの栽培適期を活かす

ホウレンソウが栽培しやすい春や秋まきの栽培でも描き時に応じて、適応品種が異なっています。 一つの品種で広い作型に対応できれば種子の利用効率は高いのですが、生産を安定させるためには、栽培適期の異なる品種を2~3種類そろえていただき、収穫時期に応じて使い分けることが生産安定のポイントです。

  • 栽培が不安な時

購入した種子の作型図のうち、該当する栽培地の最も代表的な作型を選んで栽培することです。 うまく栽培できたら他の作型に挑戦したり、翌年には播種時期を1~2週間ほど前後に広げるなど、順に取り組みを広げていただくとよいでしょう。

  • 他の野菜も考え方は同じ

他の野菜では品種により播種から収穫までの期間の差が大きく、その点も考慮して、同じように考えていただきたいです。

特に注意が必要な品目は、花が咲きやすい春に収穫するダイコン、ニンジン、ハクサイ、キャベツ、ブロッコリーなどに加え、夏の高温期に栽培するものです。作型図を参考に、品種を含めた栽培計画をたてて、野菜作りを楽しんでください。