播種について
・種の構造
双子葉植物の種は、内部に小さな植物の基である胚と成長するために必要な栄養である胚乳が種の皮の中に収まっていて、活動を停止しています。胚とは双葉となる子葉や茎となる胚軸、そして根となる幼根をあわせた総称です。
・播種の仕方
播種の基本は、十分に耕されて、水分と酸素を含んだ播種床に、種を均一な深さで等間隔に播くことです。角棒の角が底面になるよう押し付けることで一定の深さに、種を1列に並べやすくなります。深さの目安は一般的に種の大きさの2~3倍とされており、覆土は1~2倍ということです。レタス類などの好光性種子は発芽を促すよう播種溝は浅く覆土は少なめとします。覆土後は、種が乾燥しにくいよう土表面を鎮圧します。
・かん水の考え方
基本は播種した土が乾きすぎないようかん水します。ただ、かん水のし過ぎは、酸素欠乏を招いて種や根の腐敗につながるので、注意が必要です。特に、豆類は過湿に弱いため播種前に土に水分を持たせ、その水分で発芽まで管理し、発芽したらかん水を始めます。播種前の浸種や播種直後のかん水は不要です。
・種の保存
種は生きていますが活動を止めています。 種まきを終えて余った種は、茶筒に乾燥剤と一緒にいれて密閉し、冷蔵庫の冷蔵室内(5℃前後)で保存しましょう。湿度と温度を低く保って呼吸消耗を防ぐことで種の寿命は表の年数ほどに伸ばせます。
・発芽に必要な条件
種もできあがってしばらくの間は全く動かない休眠という期間があります。休眠があけたうえで、環境が整うと成長のスイッチが入ります。その環境とは、温度と水そして酸素で、他に光も一つの要因です。ニンジンやレタス類のように光があった方がいいものもあります。光は意外に土中まで届いており、種を浅く播く程度の配慮でいいです。種が吸水し、適度な温度のなかで酸素を取り入れて呼吸を始め、エネルギーを生産して発芽に向かいます。
野菜の種類によって好適な温度や水分は異なります。そのため、野菜に合わせた温度を作り出して播種するか、そのような温度が整う時期を待って播種します。 水分は、野菜の種類や土の湿り具合に合わせて、与えます。
一般にナスやピーマン、カボチャ、オクラなどは発芽に高めの温度が必要です。春の育苗では、通気性の良ガーゼやペーパータオルで包んで水に浸した後に水を切り、乾きすぎないようビニール袋で包んで紙コップに入れ、ヨーグルトメーカー(30℃×1~7日)やお腹に巻き付けて温め続けます。朝夕確認して幼根が出始めたら、速やかに地温を確保した育苗バットやポットに播種します。 夏のホウレンソウでは、一昼夜水につけてから水切りし、発芽し始めたら播種します。
・種の向き
種の向きによって、発芽率が大きく影響されるものがあります。発芽の好適環境でない時期ほど大きく影響されますので、試してみてください。
スイートコーンは、とんがりを下向きに挿しこみ、覆土はしません。 幼根が下向きに幼芽が上向きとなるのでスムーズに発芽します。落花生も同じで、先がつんと尖った方を下向きに、土に挿し、覆土はしません。
ソラマメはオハグロを下向きの水平で、胚のある膨らみが垂直になるよう種を少し斜めに表面から見える程度に土に挿します。
エダマメはへそを横向きにして播き覆土します。カボチャやスイカなどのウリ類は、発芽後の双葉が重ならないよう、縦一列にへその側を揃えて横向きに寝かせて播いて覆土します。