2022年10月号「サツマイモについて」

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サツマイモ
  • サツマイモのおいしさ

栗のように粉質で甘く、女性の方が好んで食べる野菜の代表です。掘りたてのサツマイモはホクホクで、美味しくありません。7月号で紹介したカボチャと同じようにキュアリング処理を行います。収穫したものを95%以上の湿度、温度31~33℃の環境に4日ほどおいてコルク層を発達させて病原菌や腐敗菌から守るとともに、最低でも収穫から10日間保存してデンプンの糖化を図る追熟をします。カボチャと違う点は、サツマイモは貯蔵期間が長い方が糖化が進んでおいしくなるという点です。ある程度の通気性を保って、90%ほどの湿度で温度変化を小さくして13℃ほどで保てば夏ごろまで保存できます。10℃以下では低温障害で腐敗したりします。

  • 品 種

最近出回っている品種はいずれも甘いものばかりで、品種名が浸透している数少ない野菜の一つです。皆さんが思い浮かぶ品種は何でしょう。「べにはるか」、「安納芋」、「シルクスイート」、「なると金時」、「ベニアズマ」、それとも他の品種でしょうか。

最初の2品種は、ねっとり感があり甘みの強い焼き芋向きの代表品種です。「シルクスイート」も焼き芋向きの品種で、なめらかな肉質で、すっきりとした甘さで人気があります。「なると金時」は、「高系14号」という品種から選抜された地方品種で、「ベニアズマ」とともに天ぷらや大学芋に向く、ホクホク感のある甘い芋です。

全国で一番作付けされている品種は?「コガネセンガン」という品種で、今では芋焼酎に欠かせない原材料です。 以前は臭いや独特の味から敬遠されてきた芋焼酎を、全国区のお酒に押し上げた品種なのです。

  • 植え方と収穫の特徴

図のように、4種類の植え方があります。直立植えは、芋づるの基部の2節ほどを土にまっすぐ挿しこみます。芋の数は少ないですが、早く収穫できます。水平植えは、芋づるの基部の4~5節を土に埋め込みます。芋数は多くなりますが大きさは不揃いとなりやすく、収穫時期は遅くなります。斜植え、舟底植えは先の2種類の植え方の中間になります。

  • 栽培の5つのポイント

サツマイモは比較的手をかけずに栽培できる野菜です。良い芋を収穫するために、おさえておくべきポイントは以下のとおりです。

①排水性の良い砂壌土が栽培に適し、酸性土壌を好む野菜なので、石灰質資材は多用しないでください。 また、施肥窒素量が多いとつるが茂りすぎるつるボケとなりやすいので注意が必要です。芋の肥大にはりん酸や加里が必要なことから、窒素成分が低く、りん酸や加里成分を高めてある甘藷用の専用肥料を適量施用しましょう。

②根が出て7~10日で、芋の出来が決まります。植え付け後の土の温度が22~24℃で、土の通気が良く、カリ肥料が多い状態が良く、根がスムーズに伸びられるよう早く活着させることです。土が乾燥して硬く、地温が高い状態では芋がゴボウのようになりやすいです。

③芋を食害するコガネムシ類の幼虫は大敵です。その対策として、作付け前にダイアジノン粒剤5を土壌混和してください。被害が大きい ようなら、7月上旬ごろで収穫30日以上前に、再度、作条に同剤を散布し軽く混和します。

④収穫が遅れると芋が大きくなり過ぎ果形が乱れ、商品価値が低下します。収穫の目安は植え付けから90~140日で、霜が降りるまでには終えます。目安時期になったら品種ごとに試し掘りをして、大きさを確認してから、収穫しましょう。目安は4月の植え付けで8月中旬頃、5月上旬植え付けで10月上旬頃、5月中旬植え付けで10月中旬です。

⑤最初に紹介したとおり、収穫したてのイモはおいしくありません。収穫後は、キュアリングと貯蔵でデンプンの糖化を10日以上促し、美味しさを引き出します。